講義案内(平成25年度)
タイ族仏塔(中国雲南省)
時間割(平成25年度)
※特別な表示のないものは通年科目。
※(学部)は学部生のみ、(院)は原則大学院生のみの科目。
講義
【授業の概要・目的】
10世紀以前の内蒙古・東北の諸民族につき、中国文献を主な素材として通時的に概観する。この時期の歴史的推移、中国文献の批判的分析の方法論、考古学的資料の利用法などを理解する。
【授業計画と内容】
以下の内容を逐次講ずる。
(1)序論
(2)前漢;東胡、烏桓
(3)後漢;匈奴の南北分裂、烏桓の社会、鮮卑の登場、後漢初年の烏桓、鮮卑の帰順、烏桓の帰順、
北匈奴の西遷、鮮卑の離反、烏桓の動向、檀石槐
(4)後漢末・三国;三郡烏丸、軻比能
(5)西晉・五胡十六国;拓跋部の登場、『魏書』序紀、序紀の源流、拓跋部の実態、禿髪部と乞伏部、
宇文部の登場、慕容部の登場、吐谷渾、段部の登場、拓跋部の推移、幽州・平州の動向、前燕の興
亡、北魏の成立
(6)南北朝;契丹の起源説話、『遼史』世表「元魏」「北齊」
(7)隋唐;『遼史』世表「隋」「唐」、遙輦氏と耶律氏
講読
【授業の概要・目的】
中国史に関する英語の文献を読む。
【授業計画と内容】
テキストは受講者の関心を考慮して決める。対象は大学院進学予定の四回生とする。
【授業の概要・目的】
長らく為政者の必読書とされてきた『資治通鑑』を読むことによって、漢文読解の力を養うだけでなく、中国の知識人が歴史から何を読み取ろうとしたかを考える機会を提供する。
【授業計画と内容】
今年は後漢王朝の初代光武帝の末年から三代の章帝の治世までを読む予定である。
『資治通鑑』がいかに読まれてきたかを紹介した後、本編にはいってゆく。
今年は特に対外関係の記事を中心に読んでいきたい。
テキストは標点本を使う。本文のみを読むが、胡三省の註も適宜参照する。
なお、毎時間の初めに、中国史さらには歴史一般に関するオススメ本を紹介しながら、文学部で勉強することの意味を考えてもらう素材を提供したい。
特殊講義
- 石川 禎浩(人文科学研究所) 「中国革命史・中国共産党史の諸問題」
【授業の概要・目的】
中国革命史をもって中国近現代史に代えるような歴史観は、すでにそれ自体が過去の遺物になっている。
しかし、だからといって、中国革命や中国共産党の歩みが歴史的分析の対象から除かれるということはあり得ない。
本授業においては、昨年度に引き続き、なお未解明の史実の多い中国革命史や中国共産党史の重要問題を、歴史学的手法により再検討する。
そのさい、第一次資料を重視し、歴史の現場に立ち返ることを重視するのもさることながら、革命叙述や歴史の通説が如何にして形成されてきたのか、という点にも充分な検討を加える。
【授業計画と内容】
以下のような課題について、1課題あたり3-4週の授業をする予定である。
1.中国共産党の農村根拠地における活動
2.延安整風運動と毛沢東の権力掌握、そして歴史叙述の書き換え
3.中国共産党における歴史文献・政治文献の編纂
4.政治と文学のせめぎ合い(小説『劉志丹』事件を例に)
5.「建国以来の党の若干の歴史問題についての決議」の問題点
- 中砂 明徳 前期「バタビア上空からアジアを俯瞰する」 後期「マニラ上空からアジア東部を俯瞰する」
【授業の概要・目的】
[前期]
前年度の続き。オランダ東インド会社の記録は、当時のアジア各地の情勢を知る上で貴重な情報を提供してくれるだけでなく、アジア全体をカバーしているという点で他に類をみないものである。
この授業ではバタヴィア総督府から本社に送られた「一般報告」のうち1646年から50年のものを取り上げてこれに解説を加え、アジアを俯瞰的に見る視座を提供したい。
[後期]
スペイン・ハプスブルク帝国の西の橋頭堡であるフィリピンのマニラから、17世紀前半のアジア東部(日本、台湾、中国、東南アジア)を俯瞰する。
マニラから各地に派遣された宣教師の報告が主たる材料になるが、関心はキリスト教の布教そのものにあるのではなく、スペイン側では布教を支えるファクター、現地側では布教がひきおこした反作用にある。
【授業計画と内容】
[前期]
まず、当時のオランダ人がアジア各地に進出していった状況を概観し、ついでオランダ東インド会社の史料の性格と研究状況を紹介したあと(1~3回)、各報告について解説を加えてゆく(4回以降)。
昨年は総花的な解説に終わったが、今年はアジア全体を眺めながらも、とくに台湾、中国、トンキン(ベトナム北部)、日本の記述に焦点をあて、問題をより絞り込んだ形で解説する。
[後期]
まず、17世紀のスペイン・ハプスブルク帝国におけるメキシコの位置を確認し(1回)、その「西方」にあるフィリピンとアジアの関係史(2回)、ならびにその研究史を概観(3回)したあと、イエズス会のコリンやドミニコ会のアドゥアルテの著述(スペイン語)を主にとりあげ、とくに禁
教下の日本、一時期スペイン人が占拠した台湾北部、そこを足場にして進出した中国において、布教が引き起こした様々な問題を具体的に追究してゆく(4回以降)。
- 杉山 正明 「『集史』「チンギス・ハン紀」の根本的検討」
【授業の概要・目的】
13-14世紀のモンゴル世界帝国の時代に出現したペルシア語史書の『集史』 Jami’ al-Tavarikhは文字通りの世界史であり、各地に蔵される複数の写本を利用しつつ、他の多言語史料とつきあわせて精読する。
【授業計画と内容】
モンゴル世界帝国を構成する四大部分のひとつ、西アジアに展開したフレグ・ウルスでは、第七代君主ガザンと宰相ラシードゥッディーンのもと、かつてない世界史の編纂がおこなわれ、カザン没後も弟オルジェイトゥにひきつがれ、1310-11年に成った。
その結果、ひとくちに『集史』とはいうものの、ガザン主導の「幸いなるガザンのモンゴル史」という前半と、それを踏まえつつ改訂・増補して「世界諸族志」もくわえたいわゆる『集史』という二段階の合成物となった。
そこには、かなりの改文・修正が見られる。トプカプ・サライ蔵本を底本に、タシュケント蔵本、大英図書館蔵Or.2927、Or.7628などを参照しつつ、幾つかの東方史料ともひきくらべ検討する。
【授業の概要・目的】
軍隊とスポーツの関係を、日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、中国、フィ
リピンの事例を比較しつつ明らかにする。
【授業計画と内容】
アジア・太平洋戦争中、日本国内で軍部は「外来スポーツ」を弾圧したといわれている。しかし一
方で、日本軍内部では広くスポーツが行われていた。この矛盾をどう考えればよいのか。いちはや
く軍隊にスポーツを採り入れたイギリスやアメリカを中心に、他のヨーロッパ諸国や中国、フィリ
ピンの軍隊におけるスポーツのあり方と比較するなかで、この問題に迫ってみたい。軍隊の性質、
スポーツのあり方、男性性の観念などが軍隊スポーツを規定した要因として問題となるであろう。
【授業の概要・目的】
戦国時代の竹簡に書かれた書物を読む。
【授業計画と内容】
ここ数年、戦国時代の竹簡に書かれた書物がつぎつぎと公表され、研究者の注目を集めている。郭
店楚墓出土竹書、上海博物館蔵竹書、清華大学蔵竹書などがおもなものである。関連する論文はさ
ながら洪水のようで、学ぶものを途方にくれさせる。この講義では、論文の洪水をうまく避けつつ、
竹簡の文章そのものをていねいに読んでいこうと思う。なにを読むかは、受講者とも相談して決め
たい。
- 岩井 茂樹(人文科学研究所) 「中国近世文書/档案学導論」
【授業の概要・目的】
近世の中国においては,官の側からと社会の側からとの相互作用によって秩序と制度が形成された。
こうした過程を示す一次資料として文書および档案は重要である。この講義では,文書/档案についての基本的な知識を獲得すると同時に、その読み方についても手ほどきをおこなう。古文書学演習にとどまらず、文書や档案の資料的検討から課題を発見し、それを解決する研究の手法を理解してもらうことを目指す。
【授業計画と内容】
1. 保存公文書(案巻)と条格・元典章
2. 奏議・公牘の読み方
3. 案卷・档案・文書
4. 外交において形成された文書
5. 明代黄册關係文書
6. 内閣档案の流出と档案研究の隆盛
7. 戸部档案の行方
8. 清朝と「傳國の璽」
9.清代の地方档案
10. 徽州の公文書から
- 貴志 俊彦(地域研究統合情報センター) 「非文字資料から読む日中関係史」
【授業の概要・目的】
東アジア域内では、歴史認識問題や領土問題を契機として、相互イメージが悪化し、さまざまな面
で緊張した局面が発生している。この種の政治的、社会的な対立が激化する一方で、各地では協調、
融和的な社会を築こうとする意識が働きつつあることも忘れてはならない。
本授業では、近100年に日本と中国との間で起こった歴史的事件、あるいは時代の画期となるトピ
ックをとりあげ、それぞれの局面で登場した非文字資料がはたした役割と、その受容者の解釈を検
討することを目的とする。日中関係を対象とした非文資料を取り上げることで、日中間の紛争を地
域、世論、社会集団、個人などから捉える視座と、それらを比較対照する方法を習得する。
【授業計画と内容】
1.授業の目的と方法
2.「日本」「中国」とは何か?
3.日中関係の捉え方についての諸説
4.[1900年代]日露戦争の影響
5.[1910年代]五四運動と対日観の変化
6.[1920年代] 対華21か条条約と日貨排斥運動
7.[1930年代] 満洲国問題と日中戦争
8.[1940年代] 太平洋戦争の終結と中華人民共和国の成立
9.[1950年代]サンフランシスコ講和条約と日華条約
10.[1960年代] LT(MT)貿易と文化大革命
11.[1970年代]日中国交正常化と日台断交
12.[1980年代]天安門事件と歴史教科書問題
13.[1990年代]日中共同宣言
14.[21世紀]現在の日中関係
15.総合討論
- 矢木 毅(人文科学研究所) 「朝鮮後期政治外交史の研究(19世紀)」
【授業の概要・目的】
朝鮮後期(17~19世紀)における政治史・外交史を概観し、近世朝鮮社会の特質について考察する。
漢文史料の読解能力を高めるとともに、東アジア世界との連関のなかにおいて朝鮮社会への理解を深めることを目的とする。
【授業計画と内容】
[前期]
前期は純祖・憲宗・哲宗朝における「勢道政治」の展開と、それに反発して起こった「民乱」の諸相について考察する。主な話題は次のとおり(各テーマについて3~4週の授業をする予定)。
(純祖朝)
・辛酉教難(1801)
・辛未洪景来の乱(1811)
(憲宗朝)
・己亥教難(1839)
(哲宗朝)
・壬戌三南の民乱(1862)
[後期]
後期は高宗朝における開化政策の展開とその挫折について考察する。主な話題は次のとおり(各テ
ーマについて3~4週の授業をする予定)。
(高宗朝)
・丙寅の教難と洋擾(1866)
・辛未洋擾(1871)
・壬午軍乱(1882)
・甲午更張(1894)
なお、毎回の講義において典拠史料を例示し、講読・演習の要素を加味する。『朝鮮王朝実録』や『壬戌録』などの官撰史料、および『梅泉野録』、『騎驢随筆』などの野史史料が対象となる。
- 辻 正博(人間・環境学研究科) 「中国中世~近世の法制と社会」
【授業の概要・目的】
本年度の講義は、前期の「隋唐時代の法制と社会」、後期の「唐宋時代の法制と社会」の2部構成
で行う。
〔前期の概要・目的〕
隋唐王朝の政治制度、とりわけ法制は、わが国の国家形成に大きな影響を与えた。この講義では、隋唐王朝の法制の概要を理解することを目的とする。制度が前提としていた社会のあり方についても考察することで、より一層理解が深まることと思う。
中国中世史のみならず、日本古代史に関心を持つ学生にとっても意義ある講義としたい。
〔後期の概要・目的〕
安史の乱を境に、中国社会は大きな変貌を遂げる。「唐宋変革」とよばれる中国史上の一大変革期には、法制も大きく変化した。この講義では、当時の社会との関わりをも視野に入れつつ、唐宋変革を法制の面から理解することを目的とする。
いわゆる「律令法」が唐後半期から宋代にかけてどのように変貌してゆくかを知ることによって、日本古代国家が導入を試みた法制が如何なるものであったかを感得できることと思う。
【授業計画と内容】
以下のテーマについて、1テーマあたりおおむね2~4週を目途に講義を進める。
なお、初回の授業において、授業計画および講義で必要とされる事項について説明を行う。
〔前期〕
0)ガイダンス
1)主要史料解題
2)隋王朝の律令
a)開皇律令
b)大業律令
3)隋代の法制と社会
4)唐王朝の律令
a)武徳律令
b)貞観律令
c)開元年間の律令
5)唐代前期の法制と社会
〔後期〕
1)主要史料解題
2)唐後半期の法制と社会
3)五代の法制と社会
4)宋代の法制と社会
- 松浦 典弘(大谷大学) 「隋唐時代の仏教と国家・社会」
【授業の概要・目的】
隋唐時代の仏教史研究の史料について紹介した上で、それら史料を読解しつつ、仏教と国家や社会との関係について考察する。
【授業計画と内容】
隋唐時代の仏教史研究の史料について、編纂文献史料と文物史料それぞれの概要を解説する(3回程度)。
その上で、具体的に史料を取り上げ読解しながら、国家や社会との関係について検討する。後期は石刻史料を題材に、華北の地域社会と仏教に関して検討する予定である。
- 松浦 茂(人間・環境学研究科) 「キャフタ条約交渉の研究」
【授業の概要・目的】
1727年にロシアと清朝が締結したキャフタ条約は、その後100年以上にわたり両国の関係を安定させた。
本年の講義では、ヨーロッパ・キリスト教主義外交と中華主義外交の対立という観点から両国の外交交渉を説明して、さらにキャフタ条約の締結によってロシアが目指したものを明らかにする。
【授業計画と内容】
以下の内容について講義する。
1727・28年のモンゴル国境における両国の交渉とその問題点(7~8週)
1731・1732年に清朝が派遣した外交使節(7~8週)
18世紀ロシアの対清貿易(7~8週)
ウダ川地方の領有権をめぐって(7~8週)
- 木田 知生(龍谷大学) 「宋代史史料学Ⅰ」 「宋代史史料学Ⅱ」
【授業の概要・目的】
[前期]
中国宋代史の史料学を講じる。前年度の講義対象であった宋代史の重要史籍の内容を踏まえ,同時代の編年・紀伝・政書等を題材に,その内容の詳細と史料(版本)の現状について解説する。
[後期]
前期に引き続き宋代史の史料学を講じる。ほぼ同時代の遼・西夏・金三国の史料状況を確認しながら、方志等の歴史地理関連文献、及び文集・類書・筆記、及び官箴書等を題材に、その内容の詳細と史料(版本)の現状について解説する。
【授業計画と内容】
[前期]
1.宋代史史料文献の解説,及び約20種の史料文献の講読を行う。概説と導入を含め前期15回。
2.宋代史の史料文献の内容について論述する。また関連する史料文献や工具書についても解説し,
史料運用能力を高める。
3.とくに近10年程の史料文献の整理出版状況とデータベース化の動向に留意し,その解説を行うほ
か,関連資料文献を講読し,史料文献の現状を把握するように努める。
4.講義形式を導入とするものの,その後は関連史料文献等の講読が主軸となる。
[後期]
1.宋代史史料文献の解説,及び史料文献の講読を行う。概説と導入を含め後期15回。
2.宋代史の史料文献の内容について論述する。また関連する史料文献や工具書についても解説し、史料運用能力を高める。
3.とくに近10年程の史料文献の整理出版状況とデータベース化の動向に留意し、その解説を行うほか、関連資料文献を講読し、史料文献の現状を把握するように努める。
4.講義形式を導入とするものの,その後は関連史料文献等の講読が主軸となる。
【授業の概要・目的】
唐の劉知幾は、史書を『尚書』『春秋』『左伝』『国語』『史記』『漢書』の六家に分かつ。この議論を枕に、中国古代の歴史記述の推移を概観する。文献・出土文字資料に関する史料学的研究の最新成果を理解する。
【授業計画と内容】
以下の内容を逐次講ずる。
(1)序論;劉知幾の六家説。
(2)『尚書』-帝王の発言;金文と『詩』『書』、帝王・諸侯・貴族の家譜としての歴史。
(3)『春秋』-帝王の行為;史官の記録、各国年代記の成立、『春秋』の成立。
(4)『左伝』-『尚書』『春秋』の結合;編年体による全体史の完成、『左伝』の成立過程、初期儒家による普遍的歴史認識、春秋学の成立。
(5)『国語』-戦国期における歴史記述の展開、戦国楚簡、『竹書紀年』、雲夢睡虎地出土『編年記』、秦記と趙記、長沙馬王堆および阜陽双古堆出土『春秋事語』、諸子の説話、『呂氏春秋』『韓非子』『戦国策』。
(6)『史記』-紀伝体の成立;『史記』の原資料、系譜資料と王名表、阜陽双古堆出土『年表』、史書の独自性、諸学の統合。
(7)『漢書』-断代史の成立;史学と経学、大義名分論。
(8)結論;章学誠の伝統史学批判。
- 冨谷 至(人文科学研究所) 「中国古代・中世の法制史資料の講読」
【授業の概要・目的】
秦漢時代から唐代にかけての研究に必要な漢文資料(とくに法制史)を紹介し、『通典』刑法典を読む。
【授業計画と内容】
昨今の漢文読解力の低下を鑑み、漢文資料を正確に理解するための手ほどきをおこなうとともに、漢から唐にいたる法思想を理解することをめざす。中国古代、中世史の研究を目指すもの、他に日本史専攻で漢文読解が必要なもの是非とも受講されたい。
テキストはこちらで準備して、また様々な内容の資料を取り扱う。
- 林 謙一郎(名古屋大学大学院)) 「中国西南の民族と歴史」
【授業の概要・目的】
中国西南,とくに雲南地方に分布する民族の近代以前における政治統合・民族意識の発生について概観する。
また,中国における西南民族(史)研究の歴史・西南民族研究で用いられる史料などについてもとりあげる。
【授業計画と内容】
1. 中国西南とその民族の概況
2. 秦漢時代の西南民族(BC3c~AD3c)
3. 三国・両晋時代の西南民族(AD3~4c)
4. 六朝末~隋唐初の西南民族(AD5~7c)
5. 南詔国による雲南統一(8c後半~9c)
6. 南詔国後半期の対外遠征(9世紀後半)
7. 南詔国の衰亡と大理国の成立(9世紀末~10世紀)
8. 大理国後期の国家体制と大理国の衰亡(~13世紀前半)
9. モンゴル王朝と大理段氏(13c前半~14c前半)
10. 明朝の雲南統治(14世紀後半~)
演習
- 杉山 正明 「アジア諸地域における碑刻・刻文の歴史文献学的研究」
【授業の概要・目的】
アジア諸地域では、古代イラン・インド、漢代以後の中国などにおいて磨崖刻文や王柱・碑碣類が出現し、以後は中央ユーラシアや韓半島・日本でも見られる。研究室所蔵の拓本も含め、広く利用・解読をめざす。
【授業計画と内容】
以下の各テーマのもとに、それぞれ1~3週の割合で、演習方式を採りつつ進める。
①石に文を刻すという行為の意味とその発生。
②ヨーロッパを含めた碑刻・刻文・墓誌などの多様な展開と各地域・各時代の特性。
③東洋史学所蔵拓本の紹介・把握と実際の扱い方や利用・保存。
④関係する内外各機関とその所蔵拓本ないし拓影、および厖大な石刻目録類や石刻書研究史。
⑤中華地域における漢文でしるされた碑碣の類別と展開、とくに神道碑・墓誌銘などの違いや文集。
⑥代表的な漢文碑刻のうち、未解読ないし検討不十分のものについての解読・討論。
⑦チンギス・カン碑石をはじめ、モンゴル語および蒙漢合刻・複数語合刻碑の読解と習熟。
⑧いわゆるモンゴル命令文とその碑刻について。
⑨ペルシア語・シリア語・パスパ字碑刻の検討。
【授業の概要・目的】
十三経注疏の一つである『春秋左伝正義』を精読する。
漢文資料を文法的に正確に読解する能力を身につけるとともに、経学(中国古典注釈学)の基礎的な方法論・春秋時代史の研究資料としての活用法を理解する。
【授業計画と内容】
魯の年代記の形式を採る『春秋』と、その注釈書の形式を採る『左伝』は春秋時代を研究するための基本的な資料である。『春秋』『左伝』の成立過程については今なお活発な議論が進行中である。
『左伝』には、西晋・杜預の『春秋経伝集解』、唐・孔頴達の『正義』が附されている。
本演習では『正義』を精読することで、漢文を文法的に正確に読解する能力を養うとともに、『正義』の引用する唐代以前の諸文献を調査し、また『正義』の論理構成に習熟することによって、経学の基本的な方法論を理解する。
また、先秦期の文献・出土資料を全面的に参照することによって、『春秋』『左伝』の成立過程についても考察し、先秦史研究の資料学的素養を身につける。
【授業の概要・目的】
梁啓超の初期の代表作である『新民説』を精読する。梁啓超の文体は全体的に平易といえるが、近代的な文体・語彙が確立する過程にあるという時代背景のもと、梁啓超が依拠した日本の文献と比較しながら意味を捉えていく必要がある。
まずは正確に意味を把握することを目標とするが、テキストから中国と日本、伝統と近代のせめぎあいをぜひ感じて欲しい。
【授業計画と内容】
テキストは広く用いられている『飲冰室合集』を採用するが、初出である『新民叢報』版も参照する。
五年目となる今年は、前年度の続きである第18節からはじめる。
【授業の概要・目的】
歴史上の人物についてあれやこれや論じることは、洋の東西を問わず行われているが、特に中国人が好む話題である。
この授業では明代末期に出版された人物論のアンソロジー『古今人物論』のうち『三国志』に登場する人物をとりあげた部分を読んでいく。
漢文の読解力の練成とともに、中国人の論理展開のパターン(へりくつ、飛躍も含めて)になじんでもらうことを目的とする。
【授業計画と内容】
前期は劉備、関羽、諸葛亮についての人物評を読む。
後期は曹操、荀彧、孫権を取り上げる。
- 水野 直樹(人文科学研究所) 「朝鮮近現代史関係文献・資料の講読」
【授業の概要・目的】
朝鮮近現代史を学ぶために必要な文献解読の方法を身につけるとともに、資料の探索・調査・収集のための情報・ツールなど(目録類、インターネットリソース)を解説する。
【授業計画と内容】
朝鮮近現代史に関わる朝鮮語文献を選んで講読する。
後期は、受講者の関心に応じて朝鮮語新聞の記事(植民地期から現代まで)を選び、それを解読するとともに関連する事柄を調べ発表する形式で進める。
- 村上 衛(人文科学研究所) 「在中国イギリス領事報告を読む」
【授業の概要・目的】
中国近代の社会・経済に関する英文史料を精読する。英文史料を読むことによって、イギリス人などの外からの目を利用しつつ、中国近代社会経済史に対する理解を深める。
さらに、英文史料の扱い方、長所・短所などを理解し、中国近代史を研究するにあたって利用する史料の可能性を広げ、また史料操作能力の向上を図る。
【授業計画と内容】
イギリス外交文書のうち、在中国イギリス領事の報告(FO228)を精読する。具体的には、商業紛争、海事関係・華人関係の紛争など、社会・経済に関わる紛争を取り上げる。
必要に応じてFO228に含まれている英文史料に対応する漢文史料も読む。
なお、史料の内容は非常に細かいものが多いため、講義形式の解説を加え、史料を中国近代史の中に位置づけていく。
- 杉山 正明 「『元典章』の精読と関連する諸文献」(院)
【授業の概要・目的】
モンゴル帝国治下の中華地域にかかわる法制・布告・判例集として名高い『元典章』については、日本・中国などで各種の試みがなされているが、この授業ではひたすらに同書を精読し、事実の鮮明化をはかる。
【授業計画と内容】
『元典章』に盛り込まれている内容は、その事項や判例ごとに多様であり、モンゴル治下に包摂されるまでの中華各領域での前史や慣行・あり方によって状況はまちまちとならざるをえない。
くわえて、モンゴル国家としての分封・分領体制が基本にあり、それぞれの分領所有王侯の立場によっても、事態はさまざまに変転する。
華北と江南のみならず、江淮・陝甘・四川雲南・嶺南・遼東といった地域ユニットごとにも事情は複雑に錯綜し、その時々の権力構造を十分に把握していないと、益々理解は困難になる。
文字の表面だけを追うのは、きわめて危険である。この授業では、そうしたさまざまな要件を踏まえ、さらに同じモンゴル帝国治下のフレグ・ウルスにおける類似の書であるDastur al-Katibの諸写本も参照しながら徹底精読する。
【授業の概要・目的】
楊寛『戦国史料編年輯證』を輪読し、関連史料・研究を批判的に検討することによって、中国古代史研究に関わる文献・出土文字資料・考古学的資料の運用能力を向上させる。
【授業計画と内容】
従来の戦国史(453-221BC)研究は、戦国後期の秦史に偏しており、戦国前・中期や六国については、資料の絶対量の乏しさに加えて、『史記』紀年の混乱が、歴史的推移の時系列的把握を困難にしてきた。
1990年代以降の戦国楚簡の出現は、とりわけ思想史的研究を活発化させているが、かえって文献に対する研究の立ち後れを露呈させている。
本演習では、楊寛『戦国史料編年輯證』(上海人民出版社、2001/台湾商務印書館、2002)を輪読し、関連史料・研究を批判的に検討することによって、中国古代史研究に関わる文献・出土文字資料・考古学的資料の運用能力を向上させる。
実習
- 東洋史学(実習) 杉山 正明・吉本 道雅・中砂 明徳・高嶋 航
【授業の概要・目的】
全教員4人によるリレー担当。東洋史学研究のうち、特に中国史の全時代にわたって、先行研究をどのようにして探すか、古文書をどのようにあつかうか、コンピューターを研究にどのように用いるかなど実習させるとともに、自らテーマを選んで「小論文」を発表させる。
【授業計画と内容】
主に三回生を対象とする。東洋史学専修の全教員が一年間にわたり、東洋史学を研究するにあたってのツール(工具)を教え、学生に実際に使わせる。先行研究の探し方を教えるとともに、優れた先行研究を選んで学生に読ませ、先人の達成したものを学びつつ、自らがおかれた研究情況を考えさせる。
一一月頃までにツールの修得や先行研究の選読を終え、自らの問題関心に即した研究テーマを選ばせる。
それまでに修得した知識と方法をもとにして、自ら先行研究を探し、あるいは原典の一部を読むことによって、自らの問題に解答を与えさせる。
一月中頃にこれを「小論文」として授業で発表させる。