木岡伸夫
「風土学概説」
■授業の概要・目的
地理哲学としての風土学の理論的意義を概説する。19世紀ドイツのKlimatologieを独自の学問へと展開した和辻哲郎以後、日本で中断した風土学は、フランス人地理学者オギュスタン・ベルクのmésologieに受け継がれて体系化した。両者の学問的紹介と批判的検討をつうじて、さらなる理論的展開の可能性を追求する。
■授業計画と内容
オリエンテーション:講義全体の狙いを明らかにして、本講義の基本的な立場を提示する(第1週)。続いて、以下4つのシリーズを展開する。
1)レンマ的論理の地平:「風土」は、ロゴス的二元論に立つ「自然環境」とは異なり、人と人、人と自然の〈あいだ〉に成立する。〈あいだ〉を開く東洋の「レンマ的論理」の本質的意義を、山内得立の著作に依拠して提示する(第2~4週)。
2)和辻風土学:先駆者和辻における風土学の着想と具体化、倫理学体系における風土学の位置づけを、主要著作に沿って確認する(第5~7週)。
3)ベルクのメゾロジー:西洋的知性の〈脱中心化〉からうちだされた「通態的理性」の立場と理論の到達点を、メゾロジーの発展過程に即して解説する(第8~10週)。
4)理論構成の試み:「風景の論理」(認識論)・「風土の論理」(存在論)・「邂逅の論理」(実践論)の三部門にわたって、担当者による風土学理論の構想を提示する(第11~14週)。
まとめとレポート作成(第15週)
■成績評価の方法・基準
平常点および最終回(「まとめとレポート作成」)に作成・提出されたレポートをもって成績を評価する。
■教科書
使用しない。
■参考書
授業中に紹介する。
講義に関する参考文献一覧は、初回オリエンテーション時に配布する。
■その他