シンポジウム「大正二年度朝鮮古蹟調査を探る」を開催しました。
比較文化遺産学創成部門主催によるシンポジウム「大正二年度朝鮮古蹟調査を探る」を、2022年3月25日にzoomを用いるオンライン形式で開催しました。本シンポジウムは、人文科学研究所と共同で日本学術振興会から受託した『課題設定による先導的人文学・社会科学研究推進事業』(グローバル展開プログラム)「逸失の危機にある文化遺産情報の保全・復元・活用に関する日・欧・アジア国際共同事業(JPJS0011120323)」により進めている、京都大学所蔵の朝鮮古蹟調査事業関係資料のデジタル化事業の成果の一端を紹介するために企画されました。
今回のシンポジウムは、日本と大韓民国の複数の機関に分かれて所蔵されている大正二(1913)年度朝鮮古蹟調査報告関連資料の調査・整理状況を確認し、今後それらをどのように統合・公開していくべきかについて議論することを目的としました。
早乙女雅博「関野コレクションからみた大正二年度朝鮮古蹟調査」では、東京大学で所蔵する関野貞コレクションの中で、大正二年度朝鮮古蹟調査に関係する資料の整理・公開状況が、多くの写真を用いて紹介されました。
吉井秀夫「写真からみた大正二年度朝鮮古蹟調査」では、京都大学考古学研究室が所蔵する大正二年度朝鮮古蹟調査時に撮影された写真群(このたび本センターで『京都大学考古学北朝鮮満州輯安縣遺物遺跡写真』として刊行)を、関野貞コレクションにある写真目録や、大韓民国・国立中央博物館収蔵のガラス乾板目録などと比較検討した成果を報告しました。
討論においては、谷豊信氏(元東京国立博物館)から、大正二年度朝鮮古蹟調査で輯安において採集された瓦塼類の研究動向について、説明していただきました。また、韓国における朝鮮古蹟調査事業関係資料のデジタル化事業の現状について、李基星氏(韓国伝統文化大学校)から報告をしていただきました。さらに、参加者から、資料を整理・公開していく上で参考となるさまざまな質問・指摘をいただき、それに答えることで議論を深めることができました。
前回のシンポジウム(「慶州・金冠塚がかたりかけるもの」)と同様、今回も大韓民国などから多くの研究者が参加してくださいました。コロナ禍がおさまり、同様のテーマについて、韓国の研究者を交えた国際シンポジウムが開催できる日が訪れることを望んでいます。