◆講義◆
宇佐美文理(教授)中国哲学史講義(Ⅰ)[前期]
中国哲学の基本概念を講義し、中国哲学ならびに中国文化への理解を深める。
宇佐美文理(教授)中国哲学史講義(Ⅱ)[後期]
中国の目録学について概要を示すことからはじめて、中国哲学史上の重要な書物について、経部と子部の書物を中心にそれぞれの内容について解説し、その書物が学問全体においてもつ位置についての知識を深める。
◆講読◆
池田恭哉(准教授)『文選』の文章を読む
漢文を読むための基礎的な知識を習得し、それらを活用して実際の漢文を読み、その読解力を身につけることを最大の目的とする。最初は漢文とその読み方について概説をし、またテキストとなる『文選』について紹介する。
その上で、実際の『文選』収録の文章として、三国魏の曹植による「七啓」を読解する。なおその際、『文選』に附された李善による注釈もあわせて読むことで、漢文読解における注釈の意義について考えてもらう。
◆特殊講義◆
宇佐美文理(教授)中国絵画理論研究
中国絵画の歴史を通覧しつつ、各時代に特徴的な絵画理論を検討しながら、その理論が中国哲学史上に持つ意味を考えていく。
池田恭哉(准教授)中国家訓研究(2)
中国には数多くの「某某家訓」と銘打たれた文章があるし、また後世の者に遺した言葉も多く伝わる。だがそれらに共通する特質は何なのかということは、なお明らかにされていない部分が多い。
平成31年度の特殊講義では、唐・欧陽詢撰『芸文類聚』巻23・鑑誡に収められる文章の中から、明確に子や家に伝えようと著されたものを読むことで、それらの文章が鑑誡の名の下にまとめられていることをヒントに、家訓の淵源や特質について探究してきた。今年度はその内容を踏まえつつ、前年度は読み得なかった南北朝時代にまで文章の対象を広げ、家訓が歴代どのような体裁、内容のものとして認識されてきたのかをさらに考察する。
永田知之(協力講座・人文科学研究所 准教授)漢籍目録法[前期]
漢籍目録の作成要領を理解することを通じて、中国学の基本構造を把握する。
永田知之(協力講座・人文科学研究所 准教授)漢籍分類法[後期]
四部分類法を理解することを通じて、中国学の基本構造を把握する。
船山徹(協力講座・人文科学研究所 教授)仏教漢語の語義解釈:梵語的側面と漢語的側面
5ー11世紀頃の中国仏教思想史の根幹的な発展に関わる漢字仏教語(仏教漢語)に着目し,漢語に特有の仏教語の語義解釈に迫る。
中国の仏教徒は,サンスクリット語原典を逐一比較することなく,専ら漢語で仏教を理解した。その結果,仏教漢語を理解する際に,インド本来の語義に加え,漢語特有の中国的解釈法を重ね合わせ,一語を二重三重に解釈して,意味や思想に幅を持たせる重層的効果を実現した。
この授業では,漢語に基づく仏教理解が,インド文化から何を継承し,中国でいかなる独自の展開を遂げたかを,基本的仏教語の語義を原文をもとに解明する。このことは仏教という外来文化を理解するための文化的・言語的・学術的背景を知るのに有益である。
武田時昌(協力講座・人文科学研究所 教授)中国の思想と科学
人文学はいま岐路に立たされている。存在とは何か、世界がなぜむしろ実在するか、不可知であることを前提にして至遠の理を洞察せよとはどういうことなのか。ゲノム解読によって示された生命観、歴史観は、過去の哲学的命題をちゃらにし、人類の文明史観、文化認識はちっぽけな自己満足にすぎないことを言い立てている。世界の永遠とは落陽の女神とともに海の彼方に沈む運命にあり、旅だった愛すべき詩人は二度と詩歌を口ずさんでくれない。
再生医療や不妊療法が難病克服を旗頭にして生命操作の危険を冒しはじめた現今、先端技術の暴走族をどんな倫理規範で取り締まれればいいだろうか。論じえないことに沈黙せねばならないとしても、語りえないことを語り続ける価値はある。では、パラダイムシフトの旗手となる未来の若者にいったい何を語り継ぎ、世界の記憶とすればいいのか。
現代人は多忙で苦悩に満ちた日常に立ち尽くしている。高度な科学技術がもたらした長寿社会やネット世界は、前近代社会と比較してどれほどの幸福感や安堵感を増進させたというのか。「いかに生きるべきか、どのように生き長らえ、死を迎えるのか」、そんな問いかけに模範解答すら提示できないでいる。科学的、実証的であろうとする人文学は、生きる知恵というサイエンスの原義に回帰すべきである。
そのような視座に立って、東アジアの伝統科学文化を振り返れば、天地自然と人倫社会の相互作用をアナロジーにして、社会のあり方、人間の生き方をユニークな思索を巡らしている。自分らしく生きること、考えることを追究するうえで、有益なアイデアをそこにいくつも見出すことができる。そこで、本授業では、老子と易の自然哲学を思想源とし、漢代の思想革命を経て醸成した中国的パラダイムに構造的把握を試み、その特質や可能性、限界性を探る。
なお、前期は古代(先秦から漢まで)、後期は中世から20世紀までを議論する。
橋本秀美(青山学院大学国際政治経済学部 教授)漢唐経学資料の読解[前期・集中講義]
漢代から唐代の経学文献は、宋代以降とは異なる点が多く、現代の我々が直接理解しようとしてもなかなか難しいが、努力すれば理解できることも多い。読書の楽しみは、やはり未知の体験をすることに在り、これらの資料はそのような体験を我々に豊富に提供してくれる。
個人的経験例を通して、そのような読書の楽しみをお伝えしたい。
◆演習◆
宇佐美文理(教授)国朝文録精読
古典文献の講読を通して、漢文読解力を養うと共に、中国文化への理解を深める。そのために『国朝文録』を精読する。授業は、各文章毎に、学生諸氏に訳注を準備してもらい、授業時に参加者全員で内容等について議論検討する、という形式を取る。出典に確実に当たることを重視し、本文の文章や語句などすべての典拠、用例について、もとの書物(紙で出来た書物)を調べる作業を重視する。今年は巻八の論の部分を読む。
池田恭哉(准教授)孫志祖『読書〈月坐〉録』
清・孫志祖『読書〈月坐〉録』を読む。孫志祖が関心を持ったテーマに対し、様々な角度から考察した過程を、『読書〈月坐〉録』を精読することで追体験してもらう。多彩なテーマの考証を読むことは、古典読解能力を高めるとともに、その考証の手法を学ぶことをも可能にするであろう。話題は経学を中心としつつ、中国の多様な時代、分野に及ぶので、様々な専攻の学生の出席を望む。
吉本 道雅(本研究科東洋史学専修教授)『春秋左伝正義』
十三経注疏の一つである『春秋左伝正義』を精読する。
古勝隆一(協力講座・人文科学研究所 准教授 )『荘子』郭象注を読む
『荘子』は道家思想の核心的な文献であるが、同書を理解するために欠かせないのが、西晋の郭象が書いた注釈である。この授業では、『荘子』郭象注をなるべく厳密に読み解くことを目標とする。
ただ、『荘子』が難解であるのみならず、郭象の注も相当に難解である。テクストに正面から向かい合い、正確な理解を目指すのはむろんだが、それをサポートする、書誌学的・校勘学的な知識もあわせて習得することを目標としている。
中純夫(協力講座・京都府立大学文学部 教授)『朱子言論同異攷』講読
朝鮮の朱子学者韓元震(1682~1751)の主著『朱子言論同異攷』を読む。同書は「理気」「理」「陰陽」「五行」「天地」等の項目ごとに朱熹の言論の異同を指摘し、その早晩の鑑別や「定論」の判定を企図したものである。授業は輪読形式で行い、担当者が作成した訳注原稿を受講者全員で検討する。受講者には各自、同書所引の朱熹語の原典に当たり、異同の持つ意味を整理した上で、韓元震の所論の是非を批判的に検証することを要求する。
テキストはソウル大学校奎章閣蔵『朱子言論同異攷』を使用する(プリント配布)。