2015年度 京都大学文学研究科(京大以文会協賛)公開シンポジウム「ヨーロッパの文芸共和国――わたしたちにとっての遺産」を開催しました。
2015年12月12日(土)の午後1時半より、法経本館第6教室を会場として、京大以文会の協賛のもとに、2015年度の文学研究科公開シンポジウムが開催されました。
今回の公開シンポジウムは、近世のヨーロッパに成立した「文芸共和国」をテーマとして、西洋文学と西洋史学の教員3名が講演し、関連する分野の教員4名がコメントを加えるかたちで構成されました。平田昌司研究科長の開会の挨拶に続いて、以下のようなテーマで講演が行われました。
永盛克也(フランス文学)「フランスにおける文芸共和国――モンテーニュからヴォルテールまで」
廣田篤彦(英文学)「イングランド人と文芸共和国――モア、シドニー、ミルトン、シェイクスピア(?)」
小山 哲(西洋史学)「旅と翻訳――ポーランドからみる文芸共和国」
これらの講演の内容を受けて、天野惠(イタリア文学)、中砂明徳(東洋史学)、平川佳世(美術史学)、松村朋彦(ドイツ文学)が、それぞれの専門分野の知見をふまえてコメントを行いました。その後、会場の参加者からの質問も受けながら講演者が応答し、水谷雅彦副研究科長・以文会会長による閉会の辞をもって公開シンポジウムは午後6時に終了しました。全体の司会は、金澤周作(西洋史学)が担当しました。
シンポジウムのテーマとなった「文芸共和国」とは、16世紀から18世紀にかけてのヨーロッパにおいて、学芸にたずさわる人びとが、政治・宗派・言語の境界を越えて結びついたネットワークを指す名称です。講演でとりあげられたエラスムス、トマス・モア、モンテーニュ、ヴォルテールなど近世ヨーロッパの文化・学術を代表する知識人は皆、この「共和国」の市民でした。講演とコメントをつうじて、大西洋岸から東欧・ロシアにかけて広がる知的なネットワークの存在に光があてられ、その歴史的な役割と制約、近世ヨーロッパの文化的な遺産が現代の世界に生きるわたしたちにとってもちうる意義について、議論が交わされました。
今回の公開シンポジウムは、さまざまな言語や地域を専門とする研究者が集う京都大学の文学研究科もまた小さな「文芸共和国」である、という発想にもとづいて、報告者、コメンテイター、司会をすべて文学研究科の教員が自ら担当するかたちで企画されました。言語、宗教、民族、国家の境界を越えて交流し、議論の場を共有しあうことは、21世紀に学問研究に携わるわたしたちにとっても重要な課題です。今回のシンポジウムにおける経験をふまえて、文学研究科では、人文学の直面する課題と可能性について、今後もさまざまなかたちで議論を続けていく予定です。
シンポジウム当日は、学生・教員だけでなく、市民の方も含めて、学内外から110名を越える参加者にお越しいただきました。最後になりましたが、会場に足をお運びいただき、講演と質疑応答に熱心に耳を傾けていただいたみなさまに、この場を借りて心からお礼を申し上げます。
(文責 西洋史学専修教授 小山 哲)
「シンポジウム プログラム」
「シンポジウム会場光景」