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2023年度の授業

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日本哲学史研究室ホーム

講  義

教官 上原 麻有子 種別 講義 学部(1回生以上)
曜日・時限 前期 火・5 教室 総合研究2号館 第8講義室
題目 日本哲学史講義1
概要・目的 日本哲学史を①西田幾多郎、②近代日本哲学の発展から京都学派の哲学への二部に分けて日本哲学の形成過程を概観し、さらに、これまで論じられてきた主要問題を通して日本哲学のあり方、意義について検討する。このようにして日本哲学史についての理解を深めることが、授業の目的である。
内容 以下のような課題に基づき、授業を進める予定である。
1 ガイダンス:「日本哲学」の現状
2 西田幾多郎の哲学1
3 西田幾多郎の哲学2
4 西田幾多郎の哲学3
5 西田幾多郎の哲学4
6 明治期から西田幾多郎までの日本哲学史概要
7 明治期から西田幾多郎までの日本哲学史概要
8 井上哲次郎の現象即実在論
9 清沢満之の仏教的哲学
10 平塚らいてうのフェミニズム
11 京都学派の哲学ー概要
12 三木清の哲学
13 戸坂潤の哲学
14 中井正一の哲学
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テキスト・参考文献 授業中に紹介する
教官 上原 麻有子 種別 講義 学部(1回生以上)
曜日・時限 後期 火・5 教室 総合研究2号館 第8講義室
題目 日本哲学史講義2
概要・目的 京都学派とその周辺の哲学者の思想を、いくつかのテーマを追う形で考察することが、この授業の目的である。さらに、講義で考察する日本哲学の問題が、私たち各自の経験においてどのような意義をもつのか、その経験とどのように結びつき得るのかについても検討する。
内容 以下のような日本哲学史上の主要問題を課題とし、授業を進める予定である。
1 ガイダンス
2 翻訳と言語:翻訳から見る哲学と近代日本の問題
3 翻訳と言語:西田幾多郎の翻訳論
4 翻訳と言語:和辻哲郎の「日本語と哲学の問題」
5 芸術の時間論:九鬼周造ー1
6 芸術の時間論:九鬼周造ー2
7 芸術と実存:九鬼周造ー3
8 実存協同:田辺元ー1
9 実存協同:田辺元ー2
10 自他論:西田幾多郎と田辺元ー1
11 自他論:西田幾多郎と田辺元ー2
12 風土:和辻哲郎ー1
13 表現:木村素衞ー1
14 表現:木村素衞ー2
15 フィードバック
テキスト・参考文献 授業中に紹介する

特殊講義

教官 上原 麻有子 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 水・4 教室 総合研究2号館 第10演習室
題目 和辻哲郎の『風土』再考
概要・目的 和辻哲郎の『風土』は、学術的研究として批判を受けながらも、研究対象として今日もさらに新たな考察を生み出している。授業では、先行研究に基づき、和辻自身の「風土」の概念を確認するとともに、自然、歴史性、災害、芸術という観点から「風土」の可能性を検討する。
内容 以下のような課題を通して考察を深めてゆく。
1 ガイダンス―趣旨説明と授業計画
2 『風土』の概説
3 和辻のフッサール受容と批判ー①
4 和辻のフッサール受容と批判ー②
5 オギュスタン・ベルクの風土批判ー①
6 オギュスタン・ベルクの風土批判ー②
7 和辻のハイデガー受容と批判ー歴史性の問題ー①
8 和辻のハイデガー受容と批判ー歴史性の問題ー②
9 自然か風土か―デーヴィッド・ジョンソンの見解―①
10 自然か風土か―デーヴィッド・ジョンソンの見解―②
11 風土としての芸術―①
12 風土としての芸術―②
13 風土と災害
14 風土と災害
15 風土の展望とフィードバック
テキスト・参考文献 教科書は使用しない。
毎回の授業で、講義の資料(要旨・参考文献)を配付する。
教官 大河内 泰樹 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 金・3 教室 文学部新館 第2講義室
題目 近代哲学古典講読
概要・目的 この授業では、講義担当者の翻訳にもとづいて、ヘーゲルの『精神の現象学』(1807)について講義する。扱うのは「精神章」Bである。精神章Bでは、古代の「法状態」における人倫の解体を経て、中世の封建社会からアンシャンレジームを経てフランス革命までの西欧史が概念的に再構成される。今期は、1.「自分から疎外された精神 陶冶」、I 「疎外された精神の世界」を中心として扱う。ヘーゲルの理解する封建社会においては、個人が社会から切り離され、そこから疎外されると同時に、その疎外構造の中で、国家権力と富(経済)と自己意識と関わり合いながら反転していく帰趨が描かれる。
内容 第1回 ガイダンス
第2回 『精神現象学』および精神章の構造と課題
第3回 自然からの形成=陶冶と疎外
第4回 現実性の国と『ラモーの甥』
第5回 優良と劣悪
第6回 国家権力と富
第7回 自己意識と「国家権力と富」との関係
第8回 判断から推理へ(精神の構造)
第9回 奉仕のヒロイズム
第10回 高潔な意識と下賤な意識
第11回 ことば
第12回 へつらいのヒロイズム
第13回 高潔な意識と下賤な意識の反転/国家権力と富の反転
第14回 「引き裂かれ」のことば
第15回 フィードバック
テキスト・参考文献 『精神現象学』の翻訳については大河内の訳を配布するが、以下の翻訳も手元に置いておくとよいだろう。
樫山欽四郎訳『精神現象学上/下』平凡社ライブラリー、1997年
熊野純彦訳『精神現象学上/下』ちくま学芸文庫、2018年
以下の翻訳は詳細な解説も含んでおり参考になる。
金子武蔵訳『ヘーゲル全集5 精神の現象学 上/下』岩波書店、1979年また、『精神現象学』の概要について知りたい人には以下をお勧めする。
加藤尚武編『ヘーゲル「精神現象学」入門』講談社学術文庫、2012年

精神章B・Iについては以下も参照のこと
ディドロ『ラモーの甥』岩波文庫、1964年

教官 上原 麻有子 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限
後期 水・4
教室 総合研究2号館 第10演習室
題目 「私と汝」の諸問題
概要・目的 西田幾多郎は1932年に論文「私と汝」を発表した。この論文により、それまでの観念論的傾向の強い哲学が、具体的な人間性と現実的社会性を獲得したとも言える。講義では、この転機とも言える思索の思想的、歴史的背景を探るとともに、現実の社会における自他論の意義について、考察する。
内容 以下のような課題を通して考察を深めてゆく。
1 ガイダンス―趣旨説明と授業計画
2 「私と汝」の概説
3 「私と汝」の思想背景ー①
3 「私と汝」の思想背景ー②
4 田辺元の「私と汝」批判ー①
5 田辺元の「私と汝」批判ー②
6 田辺哲学における自他論ー①
7 田辺哲学における自他論ー②
8 西田と田辺の自他論比較ー①
9 西田と田辺の自他論比較ー②
10 ジェシカ・ベンジャミンの自他論ー①
11 ジェシカ・ベンジャミンの自他論ー②
12 西田の「私と汝」の対等性
13 西田の「私と汝」の社会性
14 総論
15 フィードバック
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
教官 大河内 泰樹 種別 特殊講義 学部(3回生以上)・大学院
曜日・時限
後期 金・3
教室 文学部新館 第2講義室
題目 近代哲学の古典を読む
概要・目的 この授業では、講義担当者の翻訳にもとづいて、ヘーゲルの『精神の現象学』(1807)について講義する。扱うのは「精神章」Bである。精神章Bでは、古代の「法状態」における人倫の解体を経て、中世の封建社会からアンシャンレジームを経てフランス革命までの西欧史が概念的に再構成される。今期は、I.「自分から疎外された精神 陶冶」、2 「信仰と純粋理知」を中心として、II.「啓蒙」へと進んでいく。ここで描かれる信仰と合理的思考(これが啓蒙を生み出す)の相克がフランス革命を帰結していく。
内容 第1回 ガイダンス
第2回 『精神現象学』および精神章の構造と課題
第3回 純粋意識の現実性
第4回 信仰
第5回 純粋理知
第6回 信仰の構造
第7回 教団
第8回 純粋理知の構造
第9回 啓蒙とは
第10回 啓蒙の信仰との戦い
第11回 誠実さ
第12回 目的の追求
第13回 宗教の効用
第14回 意志
第15回 フィードバック
テキスト・参考文献 『精神現象学』の翻訳については大河内の訳を配布するが、以下の翻訳も手元に置いておくとよいだろう。
樫山欽四郎訳『精神現象学上/下』平凡社ライブラリー、1997年
熊野純彦訳『精神現象学上/下』ちくま学芸文庫、2018年
以下の翻訳は詳細な解説も含んでおり参考になる。
金子武蔵訳『ヘーゲル全集5 精神の現象学 上/下』岩波書店、1979年

また、『精神現象学』の概要について知りたい人には以下をお勧めする。
加藤尚武編『ヘーゲル「精神現象学」入門』講談社学術文庫、2012年

教官 小林 信之 種別 特殊講義 学部(1回生以上)・大学院
曜日・時限 前期 集中講義 教室  その他
題目 「形なきもの」をめぐる省察
概要・目的 ハイデガーは、形相‐質料、形式‐素材の関係が、西欧形而上学の根底にあって支配力をおよぼしつづける思考様式であることを洞察した。だとすれば、かれの存在の思想は「形」との格闘であったということもできる。他方、西田幾多郎は「形なきものの形を見、声なきものの声を聞く」と語った。ここでもまた同様に、西欧哲学と対峙しつつ「形」をめぐってくりひろげられた思考の跡をうかがうことができる。
 この講義は、形と形なきものへの問いに収斂する思想を、日本と西欧の幾人かの哲学者に尋ねて、そこからひろく、美、像、感情、詩といったテーマ系に展開することを試みるものである。具体的には、美における否定性(無関心性ともののあはれ)、像と構想力をめぐる諸問題、ポイエーシスとプラクシス等が主題化される。
内容 おおよそ以下のような内容を順次あつかう予定である(変更の可能性あり)。
1.ガイダンス: 趣旨説明と全体の展望
2.美における否定性(1): カント『判断力批判』の美の分析論から(現象における形としての美と超感性的なもの。美と倫理)
3.美における否定性(2): 無関心性にかんする諸解釈(ショーペンハウアー、ニーチェ、ハイデガー、デリダ)
4.美における否定性(3): 日本近代における受容(大西克礼のもののあはれ論、田邊元の目的論的判断力の解釈ほか)
5.美における否定性(4): 経験の現在性(西田幾多郎ほか)
6.像をめぐる諸問題(1): カントの構想力論とハイデガーによる解釈
7.像をめぐる諸問題(2): 三木清の構想力論
8.像をめぐる諸問題(3): 影像論
9.あはれと悲哀(1): 情態性とエポケーについて
10. あはれと悲哀(2): 不安と世界の非情性
11. あはれと悲哀(3): もののあはれの現象学
12. 詩作について(1): ポイエーシスとプラクシス
13. 詩作について(2): カント「自然の技術」について
14. 詩作について(3): 九鬼周造の詩論
15. 総括とフィードバック
テキスト・参考文献 授業中に紹介する。
教官 中島 隆博 種別 特殊講義 学部1回生以上・大学院
曜日・時限 前期 集中講義 教室 その他
題目 日本の近代思想を読み直す 哲学
概要・目的 日本の近代思想を、哲学者の言説をたどりながら、明治から平成に至るまで通観します。具体的には、中島隆博『日本の近代思想を読み直す 哲学』(東京大学出版会、2023年)、とりわけその「資料編」を一緒に読みながら、日本近代哲学の可能性と限界を考えてみたいと思います。
内容 第1回 日本哲学の系譜学
第2回 二つの啓蒙ーー福沢諭吉と中江兆民
          霊魂不滅論争
第3回 東京学派の哲学
第4回 近代日本における中国哲学
          近代日本におけるインド哲学
第5回 京都学派の礎ーー西田幾多郎
第6回 帝国日本を支える論理ーー田辺元
第7回 フィロロジーの行方ーー和辻哲郎
          偶然性と未来への志向ーー九鬼周造
第8回 ディアスポラの哲学ーー三木清
          マルクス主義哲学ーー戸坂潤
第9回 東北大学で展開した哲学
第10回 戦後民主主義ーー丸山眞男
第11回  戦後マルクス主義哲学ーー梅本克己
            経験と思想ーー森有正
第12回 神秘についてーー井筒俊彦
            立ち現われ一元論ーー大森荘蔵
第13回  共同主観性ーー廣松渉
            あわいの哲学ーー坂部恵
第14回  装飾的思考ーー北川東子
            「自分」という謎ーー池田晶子
第15回 まとめ
テキスト・参考文献 中島隆博『日本の近代思想を読み直す 哲学』(東京大学出版会、2023年) (早ければ2月に出版されますが、遅くとも授業開始前には出版されます)

演  習

教官 上原 麻有子 種別 演習 学部(4回生以上
曜日・時限 通年不定 教室  日本哲学史研究室
題目 卒論演習
概要・目的 授業の目的は次の通りとする。①日本哲学の分野における論文の書き方(表現、論証、資料の調査・活用など)を習得する。②研究報告を行い、口頭による発表・議論の仕方を習得する。③卒業論文を作成する。
内容 授業は、履修者の卒業研究発表とそれに関する議論をもとに進められる。前期の初回はまず、学術論文の書き方について教師の側から指導する。以降、履修者は前期に研究経過報告を、また後期には最終的な報告を、それぞれ口頭で行う。後期の授業終了後の翌週の15回目は、フィードバックの回とする。
テキスト・参考文献 授業中に紹介する
その他 日本哲学史専修の4回生以上については、必修とする。
教官 上原 麻有子 種別 演習Ⅱ
曜日・時限 通年不定 教室  日本哲学史研究室
題目 日本哲学の諸問題
概要・目的 この授業では、日本哲学の主要概念やテーマの理解を深め、また諸問題を自ら新しく掘り起こすことを目的とする。そのために、テキストの読解、研究の口頭発表という二つの方法によって訓練を行う。前期の読解の部では、英語で執筆された文献も取り入れ、同一概念の二言語による説明を理解することで、その本質的な意味や問題点を探究することを目指す。
内容 この授業は、以下の二部で構成される。
前期…I 日本哲学の文献の読解
1 ガイダンス: 読解は担当制とする。読解用の文献を選ぶ。研究発表の担当を決める。
2-3 廣松渉  論文英訳の読解ー①
4-5 廣松渉  論文英訳の読解ー②
6-7 廣松渉  論文英訳の読解ー③
8-9 坂部恵  論文英訳の読解ー①
10-11 坂部恵 論文英訳の読解ー②
12-13 坂部恵 論文英訳の読解ー③
14-15 日本哲学用語の英訳 

後期…II 参加者の研究発表
毎回:一名が口頭発表を行い、それに続いて発表者と参加者が議論する。
1 ガイダンス:発表の担当者と日程を決める。論文の書き方などの指導を行う。
2-3 発表 ー①
4-5 発表 ー②
6-7 発表 ー③
8-9 発表 ー④
10-11 発表 ー⑤
12-13 発表 ー⑥
14-15 発表 ー⑦

テキスト・参考文献 授業中に紹介する。
その他 日本哲学史専修の大学院生については、必修とする。
教官 景山 洋平 種別 演習
曜日・時限 金・3 教室  文学部新館 第1講義室
題目 存在の問いの人間性とその歴史的布置:前期ハイデガーにおける言説実践の研究
概要・目的 本演習では、Martin HeideggerのSein und Zeitおよび全集60巻Phaenomenologie des religioesen Lebens、全集19巻Platon:Sophistesの必要箇所を精読すると共に、当時の新約聖書研究(ブルトマンなど)やプラトン解釈(マールブルク学派など)の文献を考察する。Sein und Zeitの実存論的分析において現存在の本来性を「証し」する良心現象が「呼ぶ者」と「呼ばれる者」の関係により記述されるように、ハイデガーの現象学的存在論はある特定の対話構造に貫かれている。これは現象学を構成するロゴス概念が相互共同的な語りとされることと符合する。Sein und Zeitにおいて、いわば対話を通して、「問う者」としての現存在自身がおのれを見えるようにし、おのれを示すのである。しかるに、『存在と時間』に先だつ諸講義を検討すると、ハイデガーが新約聖書のパウロ書簡やアウグスティヌスの『告白』、そしてプラトンの対話篇がもつ言説実践としての性格に着目していたこと、しかもその際に同時代の聖書学やギリシア哲学研究を意識していたことが分かる。ここから、西洋哲学における言説実践の歴史的系譜が、「存在の問い」を担う人間性(現存在)が実存論的分析を通して語り出される際の<古層>となったことが予想される。この点を考察することは、現象学的存在論における人間概念の歴史的位置と含蓄の理解につながるだろう。本演習では、こうした見込みの元に、参加者とともにSein und Zeitの新たな解釈に取り組みたい。
内容 毎回一名の訳読と報告を行い、それにつづき教員が訳読とテクストの哲学的意義へのコメントを行い、その後は全員で討議する。以下に各回の講読予定を示すが、授業の進度はそのつど前後しうる。毎回2~3頁ほど講読する。
第一回 イントロダクション
第二回~三回 Sein und Zeit, 34節 「語り」概念を中心に
第四回 Sein und Zeit, 7節(B) 「ロゴス」概念を中心に
第五回~六回 Sein und Zeit, 56~57節 「良心」の呼び声の構造を中心に
第七回~九回 Phaenomenologie des religioesen Lebens およびブルトマンなど同時代の新約聖書およびアウグスティヌスの研究文献
第十回~十三回 Platon:Sophistes およびマールブルク学派やシュテンツェルなど当時のプラトン研究文献
第十四回:講読箇所に関する全体的考察
第十五回 フィードバック
テキスト・参考文献 授業で講読箇所をコピーして配布する。ただし、Martin Heidegger, Sein und Zeit, Max Niemeyerは比較的廉価なので、できれば各自購入してほしい。

景山洋平『「問い」から始まる哲学入門』(2021) ISBN:978-4334045708 (第一章で、ハイデガーのロゴス概念から導かれる人間概念の概要を論じています。参照していただけると、授業の理解が遥かに容易になります。)

その他
教官 杉村 靖彦 種別 演習
曜日・時限 水・5 教室  総合研究2号館 第10演習室
題目 Stanislas Breton, “L’Ecole de Kyoto” および関連文献を読む
概要・目的 スタニスラス・ブルトン(1912-2005)は、20世紀後半のフランスのユニークなカトリック哲学者であり、早くから現象学等の現代哲学を縦横に活用する一方で、ネオプラトニズムやキリスト教神秘主義の思想を深くとらえ直して独自の形而上学を展開した。アルチュセールの友人としても知られ、その招聘で一時パリの高等師範学校でも教えた。20世紀終盤における「フランス現象学の神学的転回」の源泉となった思想家でもある。
 授業で扱うのは、このブルトンが1974年に来日し、京都で西谷啓治らが主催する「自然とは何か」と題されたシンポジウムに参加した際の印象を元にした論考「京都学派」(1995)である。「無(rien)」の問題を自らの形而上学に深く組みこむブルトンが、京都での経験と西谷から受けた印象を織り交ぜて自らの「京都学派」像を描いていくこのテクストは、そこに含まれる誤解や一面的な見解も含めて、独自な思索が躍動する間文化的な哲学的対話の貴重なドキュメントとなっている。
 この演習では、ブルトン自身の思想が分かる他の文献や、このシンポジウムの議論を踏まえて西谷が著した論考「自然について」などの関連文献も参照しつつ、テクストを共に精読していきたい。
内容 第1回-第2回 導入
 テクストを読み進める上で必要な導入的説明を教員が行う。3回目以降の担当者を決める。

第3回‐14回
 ブルトンのテクストを精読していく。必要に応じて、関連文献から抜粋した箇所も合わせて読んでいく。各回の担当者は、担当箇所の訳出と内容要約に加え、疑問点の提示や問題提起などを含めた報告を行い、それを受けて教員がコメントと解説を行う。
  
第15回
 著作全体を振り返り、教員との質疑応答や出席者間での討議を行う。

*フィードバックの方法は授業中に指示する。

テキスト・参考文献 Stanislas Breton『L’autre et l’ailleurs』(Descartes&Cie, 1995 ) ISBN:2-910301-26-5 (テキストは適宜コピーを用意する。)
その他

基礎演習

教官 上原 麻有子 / WIRTZ,Fernando Gustavo 種別
基礎演習 学部(1回生以上)
曜日・時限 前期 木・5 教室 総合研究2号館 第10演習室
題目 日本哲学の立場から見た現代日本の社会政治問題 / Socio-political Problems in Contemporary Japan from the Perspective of Japanese philosophy
概要・目的 の授業では、日本哲学の立場から現代日本におけるさまざまな社会問題について考えます。この授業で、フェミニズム、人種差別、イデオロギーなどのトピックについて議論します。 現代社会がいかにマイノリティに対して多くのステレオタイプや抑圧的な構造を構築しているかを学びます。

In this class we will reflect about different social problems in contemporary Japan from the perspective of Japanese philsoophy. In this class we will discuss topics such as feminism, racism and ideology. We will learn how our contemporary society reproduces many stereotypes and oppressive structures towards minorities.

内容 授業計画は以下の通りであるが、ゲストスピーカーの先生方による授業も予定されている。以下の課題の順序や細部が多少変更されることもある。

第1回 ガイダンス 
第2回 多文化主義 (西田幾多郎)
第3回 多文化主義 (西田幾多郎)
第4回 フェミニズム(山川菊栄)(担当者:有坂陽子)
第5回 フェミニズム(山川菊栄) (担当者:有坂陽子)
第6回 レイシズム(人種差別)(担当者:有坂陽子)
第7回 レイシズム(人種差別)(担当者:有坂陽子)
第8回 技術の哲学 (三木清)  
第9回 技術の哲学 (三木清)  
第10回 身体の問題 (西田幾多郎)
第11回 身体の問題 (西田幾多郎)
第12回 デジタル時代の政治  (戸坂潤)
第13回 デジタル時代の政治 (戸坂潤)
第14回 デジタル時代の政治 (戸坂潤)
第15回 まとめ

参考書等 授業中に紹介する。
教官 藤貫 裕 種別
基礎演習 学部(1回生以上)
曜日・時限 後期 木・2 教室 文学部新館 第7演習室
題目 九鬼周造の時間論と偶然論(講読)
概要・目的
本基礎演習では、近代日本の哲学者九鬼周造(1888-1941)の論文集『人間と実存』(1939)に収録された二つの論文「形而上学的時間」(1931)と「驚きの情と偶然性」(1939)を講読する。
 九鬼をはじめとする日本の哲学者(特に西田幾多郎や田辺元といった京都学派の哲学者)の文献読解における困難の一つとして、論述の射程の広さと密度の濃さが挙げられる。例えば今回取り上げる九鬼の二論文では、身近な出来事(例 山の中で蛇を見かけることや四季の移り変わり)から形而上学的な話題(例 世界全体の偶然性や時間的回帰)までが、古今東西の哲学思想を縦横に参照しながら、整然とかつ凝縮された仕方で論じられており、読解は一筋縄にはいかない。そこで本演習では、参加者同士で議論しながらそれらの論述を丁寧に読みほぐすことで、日本哲学史研究全般にも通じる精読の「基礎体力」をつけるとともに、読解の「こつ」を掴むことが目指される。
内容 毎回一名が講読範囲に関する報告(要約と問題提起)を行った後、講師を含む参加者全員でコメントやディスカッションを行う。講読範囲は授業の進度によって前後しうるが、原則として各回に一節(数頁程度/区切りは論文の節立てに従う)ずつ取り扱う予定である。各回の予定は以下の通り。

第一回 イントロダクション―九鬼周造とテクスト紹介・担当者決め
第二回 「形而上学的時間」(一)―時間の無限性
第三回 「形而上学的時間」(二)―業報輪廻と万物再生
第四回 「形而上学的時間」(三)―現象学的時間と形而上学的時間(1)
第五回 「形而上学的時間」(四)―現象学的時間と形而上学的時間(2)
第六回 「形而上学的時間」(五)―形而上学的時間における宿命性と意志
第七回 これまでの補足と振り返り(時間論)
第八回 「驚きの情と偶然性」(一)―偶然性の意味
第九回 「驚きの情と偶然性」(二)―偶然と驚き
第十回 「驚きの情と偶然性」(三)―哲学史と心理学における驚き
第十一回 「驚きの情と偶然性」(四)―現実世界の偶然性と驚き
第十二回 「驚きの情と偶然性」(五)―包越としての原始偶然と驚き
第十三回 これまでの補足と振り返り(偶然論)
第十四回 総まとめ(全体)
第十五回 フィードバック

参考書等 九鬼周造『人間と実存』(岩波文庫、2016年) ISBN:9784003314654
その他

 

前年度までの授業


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