文学部創設90年を記念して1996年に始まった文学研究科公開シンポジウムは、文学研究科の研究成果を広くわかりやすく社会に発信する機会として、毎年12月に開催されてきました。23回目を数える今年度の公開シンポジウムは、12月8日に「京大古代学の最前線―古代への誘い-」と題して開かれました。
京都大学大学院文学研究科には、日本と世界の古代について研究する専修がたくさんあり、多くの教員・学生が古代世界とその文化の解明に励んでいます。日本古代史や考古学の研究はもちろんのこと、中国やインドの古代史や文化の研究、そして西洋の古代、とくにギリシア・ローマ時代の哲学・歴史・文学の研究が盛んになされています。文科大学設置以来の学的伝統を継承し、数多くの顕著な研究成果をあげてきました。本シンポジウムは、そうした研究の成果の一端を広くお伝えしたいと開かれました。
シンポジウムはまず第1部「基調報告」において、京大古代学研究の最前線を、専門としている教員のうちの5名が次のような題目でお話しました。
・日本古代史研究の最前線 ― 古代王権とウチツクニ ― 日本史学 吉川真司教授
・古墳の歴史的意義 考古学専修 下垣仁志准教授
・中国先秦史研究の現況 ―『左伝』とその周辺 ― 東洋史学専修 吉本道雅教授
・喜劇の比較研究の面白さ 西洋古典学専修 マルティン チエシュコ准教授
・プラトン哲学へのアプローチの最前線 西洋古代哲学史専修 早瀬 篤准教授
次いで第2部パネルディスカッション「古代世界と古代学の魅力を語る」では、古代学を専攻する教員のうち7名―吉川真司教授(日本古代史研究)、吉井秀夫教授(朝鮮考古学研究)、吉本道雅教授(中国古代史研究)、横地優子教授(インド古典学研究)、中畑正志教授(西洋古代哲学史研究)、高橋宏幸教授(西洋古典文学研究)、南川高志教授(西洋古代史研究)―が、その学を志した思いやきっかけ、そして古代世界や古代学の魅力をお話ししました。さらに、専門は異なるものの古代学に深い造詣を持つ平田昌司教授(中国語学・近代中国研究)と廣田篤彦教授(英文学)が古代学研究への意見を述べ、最後に「古代とは何であるのか」という学問の本質に関わる大きな問題について意見交換をしました。
会場となった文学部校舎第3講義室では、一般来聴者多数を含む130名以上の参加者が熱心に講演やパネルディスカッションに耳を傾けられました。文学研究科は今後も引き続き、国内外の人文学研究を牽引し世界の学界に貢献すると同時に、その研究成果を広く社会に発信していくよう努めてまいります。