学部
私たちは普段から「東洋」という言葉をよく耳にします。しかしどこからどこまでが東洋なのかということを考えてみますと、事はそう簡単ではありません。日本は東洋でしょうか?文学部には東洋史とは別に日本史という専修があります。「西洋」以外はすべて東洋でしょうか?アフリカや南米は東洋とはいえません。「東洋」というのはこのように甚だ曖昧な概念です。
では我々は何を研究対象としているかといいますと、東アジア各国と諸民族・地域の歴史です。本専修ではなかでも中国史研究を得意とし、主として用いるのは漢文史料ですから、学部生の間は漢文の読解力をつける訓練を受けることになります。もちろん、研究対象によっては朝鮮語、モンゴル語、チベット語なども学ぶ必要があります。現在、教員は4名いますが、さらに総合人間学部、人文科学研究所の諸先生の協力を得て、豊富多彩な授業が行われています。東洋史関係の書籍も文学部、人文科学研究所に数多く収蔵されており、京都大学文学部は東洋史を学ぶ上で最高の環境にあるといえます。
大学院
東洋史学大講座は、東洋史学専修と西南アジア史学専修から構成される。そのうち、東洋史学専修の対象とする分野は、おもに中国・朝鮮・内陸アジア・東南アジアなどのアジア東方諸地域と、そこで展開する歴史現象の全般である。もちろん、東西交流史など、この枠を超えた分野も含まれる。現任のスタッフのほか、人文科学研究所から協力講座としての教員が加わり、さらに学内各部局や学外からの非常勤講師の協力もえて、多彩な専門教育が行われる。
広く歴史学は、おもに文献と文物(遺物・遺跡など)の二種の史料にもとづく。東洋史学では、従来から、その両方に依拠しつつも、より原典の文献史料に力点を置いた研究・教育を旨としている。対象とする地域・時間の長大さから、当然、扱う原典文献も多言語にわたるが、なかでもアジア東方で最大の文字史料群である漢語文献が中心となる。江戸期以来の「漢学」の伝統に、近代歴史学の方法論を合体させた学問体系には、巨大な蓄積と技術があり、その修得が、まず求められる。これに加えて、朝鮮語・モンゴル語・満州語・チベット語などの諸語文献についても、学習の機会が開かれている。徹底した文献学の基礎に立った原典史料からの歴史把握こそ、東洋史学の最大の特色である。
中国史・漢語文献も含めて、あくまで外国史・外国語であるから、それぞれの言語そのものについても修得を心掛けてほしい。諸外国からの留学生も多く、研究室内での国際交流も活発である。さらに、日本人大学院生については、みずからすすんで留学・現地滞在などをはかり、ボーダーレスとなった国際学界のなかで自立できる能力の養成が望まれる。また、博士後期課程に在籍するものは、日本人・外国人を問わず、学術誌などへの論文発表をはかるとともに、それらを踏まえた博士論文の作成をめざすよう努めてほしい。
京都大学は、東洋史学を学ぶのに最も恵まれた環境にある。文学部図書館をはじめ、人文科学研究所内に設置された漢字情報研究センターや文学部の附属施設であるユーラシア文化研究センター(羽田記念館)などが、世界でもまれな東洋史学関係文献の一大宝庫を形作っている。また、専門研究者が、さまざまな方面にわたって、厚い層を形成している。教室内でも、研修員・大学院生によるテーマごとの研究会が活発に行われている。なお、研究室には全国学会である東洋史研究会の事務局が置かれ、学術誌『東洋史研究』(季刊)を発刊するとともに、毎年1回、大会を催している。
以上、大学院文学研究科・文学部専修案内より