東洋史学は、本学創設期以来、桑原隲蔵・内藤湖南をはじめ、日本における東洋史学研究のトップランナーとして、すぐれた人材・研究者を数多く世に送り出してきた。現在は杉山・吉本・中砂・高嶋の四人が、それぞれきわめてユニークかつ突出した研究を展開し、学生・院生・OD・留学生らとともに多様なアプローチの研究を繰り広げている。
杉山 正明 教授
【主要業績】
杉山の著書は、『大モンゴルの世界』(角川書店、平成4年)をはじめ、『クビライの挑戦』(朝日選書)、『耶律楚材とその時代』(白帝社)、『逆説のユーラシア史』(日本経済出版社)、『遊牧民から見た世界』(同)、『世界の歴史――大モンゴルの時代』(中央公論社)など、およそ30点。共著・論文は五十点あまり。そのほか翻訳書や海外で翻訳出版されたものも十数点。なお今年中に六冊の新著刊行を予定している。
その外、国内のほか、米・英・独・仏・蘭・中国・韓国などで、授業・共同研究・講演を重ねている。また、世界を席巻したNHK・BBC共同作成の『大モンゴル』1~5、同じくNHK『新シルク・ロード』の立案・作成、NHK大河ドラマ『北条時宗』の時代考証などを行った。現在、「ひとりで書く世界史」に取り組んでいる。
吉本 道雅 教授
【主要業績】
・『中國先秦史の研究』(京都大学學術出版会、2005)
・『周代中国の社会考古学』(翻訳、京都大学學術出版会、2006)
・『内蒙古東部における青銅器文化関係資料の調査に基づく先秦時代北方民族の研究』(科研費報告書、2009)
・『内蒙古東部・遼寧西部における出土資料の調査に基づく鮮卑・契丹史の研究』(科研費報告書、2013)
・「清華簡繋年考」(『京都大学文学部研究紀要』52、2013)
・「國語成書考」(『京都大学文学部研究紀要』53、2014)
【自己紹介】
秦始皇帝の天下統一から宣統帝退位にいたるImperial Chinaを相対化して考えるため、始皇帝統一以前の「先秦」時代の研究を続けてきましたが、近年はこれに加えて、東北アジア(戦前のいわゆる「満蒙」)の研究も進めております。現在はもっぱら、『左傳』を中心に、先秦時代の歴史記述のありかたを考えております。
中砂 明徳 准教授
【主要業績】
・『中国近世の福建人』(名古屋大学出版会、2012)
・『江南』(講談社選書メチエ、2002)
・「マカオ・メキシコから見た華夷変態」(『京都大学文学部紀要』52、2013)
・「イエズス会の極東関係史料――「大発見の時代」とその後」(『東アジア書誌学への招待』第二巻、東方書店、2011)
・「イエズス会士フランチェスコ・サンビアシの旅」(『アジア史学論集』3、2013)
・「マルティ二・アトラス再考」(『大地の肖像』京都大学学術出版会、2007)
【自己紹介】
17世紀に世界の各地に散らばっていたイエズス会士とオランダ人が残した史料(主にポルトガル語とオランダ語)を使って、当時アジアに進出していたヨーロッパ人の活動、異文化観などを明らかにしようとしています。最近は、太平洋を越えてフィリピンにやってきたスペイン人の活動にも関心を持っています。私の来し方については(http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/news/alpha-academic-spectrum/)をご参照ください。
高嶋 航 准教授
【主要業績】
・『帝国日本とスポーツ』(塙書房、2012)
・『新民説』(翻訳、梁啓超著、平凡社、2014)
・「戦時下の日本陸海軍とスポーツ」(『京都大学文学部研究紀要』53、2014)
・「菊と星と五輪:1920年代における日本陸海軍のスポーツ熱」『京都大学文学部研究紀要』52、2013)
・「「東亜病夫」とスポーツ:コロニアル・マスキュリニティの視点から」(『近代東アジアにおける翻訳概念の展開』京都大学人文科学研究所、2013)
・「上海セント・ジョンズ大学スポーツ小史(1890-1925)」(『長江流域社会の歴史景観』京都大学人文科学研究所、2013)
・「1920年代の中国における女性の断髪:議論・ファッション・革命」(『中国社会主義文化の研究』京都大学人文科学研究所、2010)
【自己紹介】
身体(の変化)を通して近代という時代、あるいは世界を眺めています。以前は女性の身体を対象にしていましたが、近年は男性の身体に興味を移しています。現在とりくんでいるテーマは軍隊とスポーツです。東洋史でスポーツを研究するのは苦労も多いですが、これまで未開拓だっただけに、可能性はあります(が、研究者を目指す学生には勧めません)。軍隊については、軍隊そのものというより、軍隊と社会の関係を解明していきたいと考えています。